家庭環境の多様化で教員のストレスも増加~教育の土台作りは家庭から~【日本の学校教育①】

家庭環境が変化していく中で、教員の負担は増大しています。価値観の違いで家庭の問題に踏み込めない歯がゆい現実や、多岐に渡る日々の仕事によって、多くの教員は問題解決・スキルアップなどを休暇や退出後の時間を使い、ストレスが増える環境にあります。家庭と学校の両輪による教育の大切さについて考えて行きたいと思います。

学校教育を取り巻く家庭環境の変化

ここ30~40年で少子高齢・核家族化がますます進んでいます。そして国際情勢を背景として、1985年に制定された男女雇用機会均等法や高学歴化による女性の社会進出の一般化などの社会環境によって、家族のライフスタイルも大きく変わってきました。その中で、女性の社会進出が進んでいるにもかかわらず、家庭と仕事を両立する条件の整備が追いついていない現状もあります。さらには都市化・過疎化の進行によって、子どもたちを取り巻く状況もずいぶん変わってきています。 以下の日本の人口推移を見ても、その変化は見えてくるのではないでしょうか。 2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」 ※総務省『情報通信白書』(2016年版)より

日本の教員にかかる負担増、勤務時間はOECDの平均以上!

一方、学校現場での状況はどうでしょう。以下の小学校の学年別児童数データで見ると「本務教員(常勤職員)1人当たり」の児童数は少しずつ改善が進んでおり、微減している状況ですが、学級規模は1クラスあたり30-35人というところが多く、少子化とはいえ教員1人が担当する児童数はあまり変わっていないと言えます。 ※文部科学省『学校基本調査』(2016年度)より 世界に目を向けてみても、日本の小学校及び中学校の学級規模はOECD(経済協力開発機構)加盟国の中でも最大規模の一つであり、教員1人当たりの担当児童数で見ても、小中学校ともに、平均よりも多い水準です。 ※OECD『図表でみる教育2016年版』より さらに、授業時間はOECD加盟国中で短い方なのにもかかわらず、法定勤務時間は OECD 平均を上回っています。この勤務時間の中で、日本の教員は様々な家庭環境の子どもたちに柔軟に対応していくことが求められています。

終わらない勤務時間内での対応、教員もストレス増

前述のように家庭環境の多様化により子どもたちが抱える問題が複雑化しています。それに伴って、現場の教師がその問題に思い描くように対応できない場合や、勤務時間超過等によりストレスを抱えていることが多いのも事実です。 次にあげるのは、ある家庭での「孤食」が招いたトラブルの事例です。 毎日お金を与えられて夕食を買い、1人で済ませる、そんなことが日常的な子どもがいました。あるとき、それではお腹が満たされずその子はスーパーへ駆け込みました。そして、持っていた現金では足りずに思い余って商品を盗んでしまったのです。この事実が発覚した後、すぐに保護者に連絡は入ったのですが、保護者は仕事の都合のためすぐには子どもを引き取りに行けなかったのです。そこで、第一報を受けた終業後の先生が引き取りに行き、学校子どもと一緒に保護者の帰りを待ちました これは一例であり、それぞれ各家庭での事情も違ってくるかと思います。教員は多様な価値観をもつご家庭のお子さんを預かり、臨機応変な対応を迫られることが増えているように感じています。時には時間外であり、土日に対応することもあります。

家庭の問題にはなかなか踏み込めない・・・

保護者、保証人のそもそもの価値観、捉え方の違いもあるため、家庭問題にどこまで踏み込めるのかは非常にナイーブな問題です。教員が子どものためと想い行動したことが、保護者から批判されてしまうこともあります。教員は、問題に対する専門性が十分に備わっていない場合があったり、そのほかの業務も抱えていたりで、問題解決のためにたっぷりと時間がとれないことから、歯がゆい思いをすることがあります。 もっと時間をかけて対応したいと思う一方で、教材研究、添削・採点業務、資料作成、保護者対応、会議・出張等の公務分掌業務、部活など多忙化している中では、自分の休暇や退勤後の時間を使わなければスキルアップや問題解決のための時間をとることは困難となっています。

教育って学校だけで行うもの?

このような現状の中で、具体的に家庭からの要望で、学校で教育してほしいこととはどんなことがあるでしょうか。各教科学習、協調性・社会性を身につけさせる等の生活面での指導、食育、性教育、スマホの使い方など…数え上げたらきりがありません。各家庭によりその要望は様々でしょう。 私としては、家庭での教育基盤(=素地)があって(ここがとても大切!)、その上に学校教育が積み重なり、頭の中で整理されてその子の知識や経験値に厚みが増していく、というのが理想的だと思っています。 子どもと外出するときに、「これ、なんて虫かなぁ。足が6本だね。羽の色は…?」「図鑑で調べてみよう!」「この花、教科書で見たことある!なんて花だったかな。あ、ツルレイシだ!ゴーヤのことなんだよね?」「よく知ってるね~。今度一緒にお料理に使ってみようか?」といった何気ない日常生活で交わされる会話。こういったことから自然と調べ学習に発展したり、家事に取り入れたりして子どもの興味をひろげていくことが教育基盤となるのではないかと思うのです。 もちろん、学校で学んだことを家庭での生活の中でさらに広げていく、という逆のパターンもあるでしょう。家庭と学校で興味をもったこと、学んだことが自然と相互に重なり、生きた知識として広がっていくといいです。大人もそうですが、子どもも自分が興味のあることであれば受け身にならず、楽しく学んでいけるものです。

学校任せにせず、家庭と学校と一緒に子育てを

そのためには、「家庭で必要な教育」と「学校で必要な教育」をきっちり線引きするのではなく、この2つがぎゅっと寄り添い重なる部分を多くしていき相互に関係性をもつことで、効果的な教育になっていくのではないかと考えます。 性教育やスマートフォンの使い方について、学校だけで指導してもあまり効果はありません。 上述したような教科学習についても同じです。日常的に家庭で、自然とそのような話題に触れているかどうか。その頻度が高い子どもには「ストン」と胸に落ちる瞬間があり、体感したり実感したりして「自分事」となり「知識」になるのです。ぜひ、お子さんが興味をもったことに、とことん付き合ってみてください。 今後、「教育」のあり方については、様々な選択ができるようになってくると思います。子どもにとって、どのような選択がベストなのかを考えていく上でも、まずは教育の土台を家庭でしっかりと築いていくことの大切さを私自身も強く感じています。 そして、上述したような学校現場の現状を保護者が理解し、学校に全てを任せず協力関係を築いていくことが、社会全体で子どもを育てていくということに繋がるのではないでしょうか。 皆さんのご家庭や学校ではいかがですか? 〖出典〗 ・総務省『情報通信白書』(2016年版) ・文部科学省『学校基本調査』(2016年度) ・OECD『図表でみる教育2016年版』 ・総務省『国勢調査』(2016年) ・文部科学省『公立学校教職員の人事行政調査について』(2015年度)
written by maru 6歳年長と9歳4年生の子育て真っ最中のワーキングマザー。大学卒業後、大学研究室事務、幼稚園・小学校教員、学校司書教諭補助などをしながら出産、子育て。 毎晩続いている子どもと絵本を読む時間、趣味でドラムをたたく時間が至福のひととき。空や植物、自然の色彩の変化を眺めるのも好き。
The World’s Mother Salonでは各国の教育事情を配信しています。 ・塾に行かないドイツの子どもたち。大学入学のためのギムナジウムとアビトウーアとは?/Germany公立?私立?勉強に追われる子ども達/Taiwan も併せてお読みください。

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