畜産について考える~卵ができるまで~

卵焼き、目玉焼きなどの卵料理やスイーツ、卵は食卓に欠かせない食材の1つとなっています。卵や乳製品は動物の命を頂くのとは違うので食べている、という方も多いかもしれません。そこで今回は、あまり知られていない動物福祉の観点から、卵について考えていきましょう。

卵が大好きな日本人

農林水産省の統計によると、日本では現在1億7,334万9,000羽もの鶏が採卵用として飼育されています。また、世界別の年間消費量を見てみると、メキシコ、マレーシアに続き世界第3位で、1人あたりの消費量は年間329個と言われています。(※2)
1位 メキシコ  347個 /1日0.951個
2位 マレーシア  331個 /1日0.907個
3位 日本  329個 /1日0.901個

知られざる卵の裏側

くちばしの切断

みなさんは、ビークトリミング(デビーク)という言葉を聞いた事がありますか?ビークトリミングとは、beak(クチバシ)の切断の事です。鶏の雛は生後5~10日くらいの間にクチバシを切り取られます。ビークトリミングは鶏同士がつつき合い傷つけあう事を防ぐのが目的で、日本の養鶏場の83.7%で行われています。(※3)
鶏は本来、1日に15000回地面をつついて過ごす生き物で、特に前回紹介したバタリーケージで飼育されている鶏は、鶏が持っている「つつきたい」という欲求を満たすことができず、転嫁行動として仲間をつついてしまうと言われています。また、クチバシの切断は無麻酔で行われます。クチバシは複雑に神経が通う機能的な器官で、切断による出血や痛み、その後も慢性的な痛みを経験するそうです。(※4)

卵を産めないオスの行方は?

卵を産むのはメスの鶏のみです。では、卵を産めないオスはどうなるのでしょうか?採卵鶏は、生まれてからオスかメスか選別され、オスはそのまま処分されてしまいます。(※5)

レーザーによる検卵

2016年12月、処分の残酷さから独ドレスデン工科大学と、リトアニア・ヴィリニュス大学の研究チームが、鶏の有精卵にレーザーを当て雌雄を見分ける技術を開発しました。この技術では、孵卵器で暖めはじめ4日後の有精卵に赤外線レーザーを照射し、胚の中の血液の蛍光の具合からオスとメスを判別します。
研究チームによると、380個の有精卵について試験をしたところ、93%の確率で正しくオスとメスを分類できたとのことです。(※6)しかし、オスが処分される事に変わりはありません。

平飼い卵

健康や動物福祉の観点から平飼い卵を選択する方も多いと思います。「平飼い」と聞くと、広々とした草原で飼育されているイメージを持つ方も多いのではないでしょうか?しかし、2016年の採卵鶏の飼養実態アンケート調査よると、平飼いでの1羽あたりの飼育面積は、41.5%で1,000c㎡以下/羽、15.1%で370 ㎠未満/羽の過密なスペースで飼育されています。(※7)
これは、バタリーケージの広さと変りません。日本での「平飼い」の定義は、「鶏舎内又は屋外において、鶏が床面又は地面を自由に運動できるようにして飼育する飼育方法をいう。(※8)」とされてれおり、具体的な数値は設定されておらず、過密飼育についても考えなければいけません。

健康へのリスク


また動物福祉に加え、私たちの健康へのリスクも懸念されています。

心臓病

オックスフォードのベジタリアン研究によると、13年間6000人のベジタリアンと5000人の肉食者を追跡調査したところ、卵を週6個以上食べる人は、1個以下の人に比べ、心臓病で亡くなるリスクが2.47倍に増加。

前立腺がん

ハーバード大学の研究によると、卵を週2.5個以上食べる人は、週1個以下の人と比較すると、前立腺がんで死亡する割合が81%増加。(※9)
このように、卵にも様々な問題があり、「食べない」という選択肢が動物を解放し、私たちの健康を守る一番の近道なのではないでしょうか。
(出典:※1 農林水産省畜産統計  http://www.maff.go.jp/j/tokei/sokuhou/tikusan_16/
(出典:※2 鶏鳴新聞社 IEC年次統計 http://www.keimei.ne.jp/article/20141005t1.html
(出典:※3 公益社団法人畜産技術協会 採卵鶏の飼養実態アンケート調査報告書
http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/H26/factual_investigation_lay_h26.pdf
(出典:※4 特定非営利活動法人アニマルライツセンター
http://www.hopeforanimals.org/animals/tamago/00/id=441
(出典:※5 特定非営利活動法人アニマルライツセンター
http://www.hopeforanimals.org/animals/tamago/00/id=427
(出典:※6 japanese.engadget http://japanese.engadget.com/2016/12/16/4/
(出典:※7 公益社団法人畜産技術協会 採卵鶏の飼養実態アンケート調査報告書
http://jlta.lin.gr.jp/report/animalwelfare/H26/factual_investigation_lay_h26.pdf
(出典:※8 地鶏肉の日本農林規格
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/kikaku_jidori_150821.pdf
(出典:※9 Hachidory  http://www.hachidory.com/beauty/00/id=414

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